八島功男 農林水産業

ハクレン、アメリカナマズなどの未利用魚の活用実証実験進む(霞ケ浦・北浦)

茨城県議会公明党の八島功男議員(土浦市選出)らの提案により、茨城県は本年度から、霞ケ浦北浦の外来魚などを魚粉化して飼肥料をつくる実証実験を行っています。
北浦では、名産のワカサギやテナガエビの漁獲量が年々減る一方、ハクレンやアメリカナマズをはじめとする外来魚が増加し、食害や生態系の変化が起こっていいます。ハクレンなどは食用に向かず利用価値の低い「未利用魚」であるため、焼却などで処分するしかありませんでした。
実証実験は、漁業関係者を悩ませていた“厄介者”に新たな価値を付けることで、漁業者の収入確保につなげる狙いです。①ハクレン(小魚を含む)②アメリカナマズ③未利用魚全般――の3パターンの魚粉を製造し、それぞれ有効成分などを測定。その結果を基に飼料や肥料などの活用策を検討していく計画です。2024年度の事業化を目指します。
北浦の主要な水産資源の漁獲量は、シラウオがほぼ横ばいで推移する一方、ワカサギとエビ類は1978年以降、著しく減少が進んでいます。ワカサギは最盛期の1984年には1570トンでしたが2021年は35トンに、エビ類は68年に4763トンを記録しましたが21年は37トンまで落ち込み、過去最低となりました。
県漁政課は、ワカサギは高水温に弱く、ここ数年の夏場の高い気温が悪影響を及ぼしたと指摘。エビ類については、生息場所となる水生植物の減少と、アメリカナマズなどの「天敵」の増加を要因に挙げています。
これに比例するように、漁師の数も減少しました。農林水産省の「漁業センサス」によると、霞ケ浦一帯の漁業従事者は2008年に725人いたが、十年後の18年には326人と半数以下になっています。
八島議員はこれまで、霞ケ浦の環境保全や生態系の維持を一貫して推進してきました。今年3月の定例会ではアメリカナマズによる食害問題を取り上げるとともに、漁業振興を訴えていました。
八島功男議員の質問<令和5年第1回県議会一般質問>
霞ヶ浦北浦の漁獲量は、1978年の1万7500トンをピークに、2020年には僅か670トンとピーク時の4%まで減少しました。中でも、2019年以降、ワカサギ、シラウオ、テナガエビ、ゴロのいずれも極端な不漁が続き、2022年7月21日のワカサギ漁でも、北浦では1隻当たり2~4キログラムの水揚げしかなく、ほとんどの船が出漁を諦めざるを得ない状況でありました。ワカサギの解禁以降、漁模様は過去最低でも、最も不漁の水準でありました。
これらの要因は、夏の気温上昇で暑さに弱いワカサギが減耗したことであり、加えて、アメリカナマズなどによる食害であると指摘されております。また、湖底近くに生息するテナガエビやゴロの減少は、河川からの汚濁が原因ではないかという意見もあるようであります。
一方で、シラウオが全国順位1位、2位を争う漁獲量であることから、霞ヶ浦北浦における漁業のトップブランドになる可能性に期待が高まります。
以上を踏まえて、県においては、第1に、資源管理型漁業を推進するための資源モニタリングによる人工ふ化に取り組んでいただきたい。第2に、アメリカナマズなどの食害による被害を軽減するための駆除活動に対する財政的な支援をすることをお願いしたい。第3には、漁場環境保全のための水生植物帯の新設及び機能保全のための取組をこれまで以上に推進していただきたい。第4には、霞ヶ浦北浦の水質環境を悪化させる汚濁要因を多面的に軽減する対策を講じていただきたい。第5には、シラウオなどの品質保持技術を支援し、ブランド化を推進していただきたいと考えます。
これらを踏まえて、霞ヶ浦北浦における新しい価値創造と漁業の振興について、農林水産部長の御所見を伺います。
農林水産部長の答弁<令和5年第1回県議会一般質問>
霞ヶ浦北浦における新しい価値創造と漁業の振興についてお答えいたします。
霞ヶ浦北浦は、ワカサギ、シラウオ、テナガエビなど全国トップクラスの漁獲量を誇る豊富な水産資源に恵まれ、それらの水産資源を活用した漁業や水産加工業が盛んに営まれております。
これまで、県では、水産業の振興に向け、漁業者が行う資源管理の取組への支援のほか、ワカサギの人工採卵やふ化放流など種苗生産の技術指導、魚介類の産卵や稚魚の育成の場となる水生植物帯の造成といった取組を進めてきたところです。
しかしながら、近年、世界的な温暖化に伴う湖の水温上昇により、高水温に弱いワカサギの漁獲量が減少傾向にあると考えられていることから、これまでの施策に加え、新たな視点での施策を実施する必要があると考えております。
そのため、議員御指摘のとおり、近年、シラウオについては、全国1位、2位を争う漁獲量となっている強みを生かす取組や、漁獲されても売り物にならず処分されているハクレンなどの未利用魚の活用などに着目した取組について、新たな施策として展開することとし、今定例会に新規予算案を提案させていただきました。
まず、霞ケ浦北浦産シラウオトップブランド化事業として、県が開発した新たな品質保持技術の漁業者などへの普及促進や、生産体制の構築の支援、市場調査や成分分析に基づく商品規格の設定などに取り組み、高品質化を図ることにより、全国トップクラスの高価格シラウオの創出を目指してまいります。
次に、未利用魚有効活用促進事業として、ハクレンなどの未利用魚を原料として魚粉を試作し、たんぱく質や脂質などの成分分析により、その特性を把握するとともに、飼料・肥料としての有効活用に向けた需要調査、生産現場での実証試験などを実施してまいります。
これにより、世界的に価格が高騰している飼料や肥料原料の代替として、農業分野での活用も視野に入れ進めていくことで、霞ヶ浦北浦における資源の有効活用と、新たな漁業収益の創出による漁業経営の安定化を図ってまいりたいと考えております。
また、持続的な漁業を営んでいく上では、水産資源の維持及び漁場環境の保全が不可欠となっております。
このため、ワカサギ資源の維持・増大に向けた取組と併せて、漁業者によるアメリカナマズなどの駆除に対する支援を行うことにより、ワカサギなどへの食害を防止するとともに、魚体に含まれる窒素やリンを湖から除去することにより、水質の浄化を図ってまいります。
また、水生植物帯の造成については、不漁が深刻な北浦に重点化し、より長期にわたって生育環境が保持されるよう、構造の改善などを進めるとともに、既存の水生植物帯に対しても、機能保全対策に取り組んでまいります。
県といたしましては、水産資源の維持と漁業環境の保全に一層取り組むとともに、新たな漁業収益の創出などにより、霞ヶ浦北浦における新しい価値創造と漁業の振興を図ってまいります。