茨城県民にとって重要なランドマークである鹿島セントラルビル(鹿島セントラルホテル)が、新たな局面を迎えました。鹿島都市開発株式会社が所有するこのビルの譲渡先が決定し、その詳細が5月14日の県議会特別委員会で明らかにされました。
鹿島セントラルビルの譲渡は、茨城県と鹿島都市開発株式会社が共同で進めてきた公募型プロポーザル方式により行われました。2023年10月31日から2024年3月6日にかけて、民間事業者からの提案を募り、その中から最も優れた提案を選定するプロセスが行われました。
提案を受け付けた結果、唯一応募があったのがフォートレス・インベストメント・グループ・ジャパン合同会社(以下、フォートレス)でした。2024年3月27日、学識経験者やホテル業専門家、企業会計専門家、地元関係者などで構成される選定委員会により、フォートレスの提案が評価され、最優秀提案者として決定されました。続いて、4月3日に開催された鹿島都市開発株式会社の臨時取締役会にて、全会一致でフォートレスが優先交渉権者とすることが承認されました。
フォートレスは1998年に設立された投資会社で、国内で3,800件以上、総額1兆1,000億円以上の投資実績を誇ります。本部は、アメリカ・ニューユークにあります。長期的な視点での投資・運営を行う同社は、ホテル運営会社の株式会社マイステイズ・ホテル・マネジメントやREITのインヴィンシブル投資法人、ゴルフ場運営のアコーディア・ネクスト株式会社などをグループに持っています。最近では2023年9月、セブン&アイホールディングスからグループ内で百貨店を運営するそごう・西武の全株式を2200億円で取得。2024年5月セガサミーホールディングスから宮崎市の大型リゾート施設「フェニックス・シーガイア・リゾート」を運営しているフェニックスリゾートの全株式を取得するなど、大型案件が目白押しです。
県内では、亀の井ホテル大洗(旧かんぽの宿大洗)、亀の井ホテル潮来(旧かんぽの宿潮来)、亀の井ホテル筑波山(旧つくばグランドホテル)を運営しています。
フォートレスは、鹿島セントラルビルの譲受価格を22億円と提示し、新館を「アートホテル鹿島セントラル」、本館を「フレックステイイン鹿島セントラル」として運営する予定です。新館はフルサービスのホテルとして、宴会場やレストラン、結婚式場を含む設備を維持しつつ、オンライン予約サイトの活用により集客を強化します。また、客室やレストランの改装、温浴施設の美装など、10億円以上の改修工事も計画されています。
フォートレスは、地域との共生を重要視しており、地元のイベント開催や多言語対応の自社ウェブサイトを通じたインバウンド観光客の誘致を図ります。雇用面では、現ホテル従業員全員が引き続き勤務できるよう配慮し、雇用条件も1年間以上は現行と同等以上を維持する方針です。
2024年6月に開催される県議会第2回定例会において、優先交渉権者の決定が報告されます。その後、9月には鹿島都市開発株式会社の臨時株主総会で譲渡が承認され、県議会第3回定例会(9月開催予定)にて県有財産売却の議案が提出され、議決される予定です。最終的に、2024年10月に譲渡が実施され、フォートレスによる新たな運営がスタートします。
鹿島セントラルビルの譲渡は、地域の経済活性化や観光振興に大きく寄与することが期待されます。今後も地元との連携を深めつつ、鹿島セントラルビルが新たな魅力を発信し続けることを願っています。