2025年3月11日に茨城空港は開港15周年を迎えます。
茨城空港は、2010年に航空自衛隊との共用空港として開港しました。当初は年間約20万人の利用者にとどまっていましたが、2019年度には約78万人にまで増加し、首都圏や周辺県の航空需要に対応する重要な空港へと成長しました。しかし、新型コロナウイルスの影響により一時的に旅客数が減少したものの、2023年度には約75万人まで回復し、再び成長の軌道に乗りつつあります。
このような状況の中で、茨城空港はさらなる発展を目指し、「茨城空港将来ビジョン(案)」を策定しました。本ビジョンは、地域経済の成長や観光振興、さらには災害時の対応拠点としての機能強化を掲げており、その実現のために多くの取り組みが予定されています。
将来ビジョンでは。茨城空港が果たすべき役割として、以下の3点が挙げられています。
1.観光・ビジネスの拠点としての成長
国内外との観光・ビジネスの架け橋となり、地域の賑わいを創出する空港を目指します。特に、茨城県だけでなく近隣県の経済発展にも貢献することが期待されています。
2.関東圏における第3の空港としての機能強化
羽田・成田に続く関東圏の3つ目の空港として、国際・国内の航空需要に応える存在となることを目指しています。
3.災害対応の拠点としての役割
首都直下型地震や大規模災害時には、救援活動の拠点として機能することが求められています。過去には東日本大震災時に近隣空港と連携し、救援人員や物資の輸送を行った実績もあります。
このビジョンを実現するため、茨城空港では具体的な施策が計画されています。
1. 路線ネットワークの拡充
現在、国内線は札幌(新千歳)、神戸、福岡、那覇の4都市に直行便があり、さらに神戸経由で宮古(下地島)、長崎、鹿児島へもアクセス可能です。国際線では、中国(上海)、台湾(台北)、韓国(清州)などとの路線が運航されており、今後はベトナム、シンガポール、タイなどアジア各国への新規路線開設を目指しています。
2. 旅客の利便性向上
旅客数の増加に対応するため、ターミナルビルの拡張が計画されています。特に保安検査場の増設や自動化によるスムーズな手続きの実現、待合室の拡張、駐車場の立体化などが検討されています。また、空港へのアクセス改善として、空港バスの増便や多言語対応案内の充実が進められる予定です。
3. 観光・ビジネス需要の創出
茨城空港を利用した観光プランの開発が進められています。特に富裕層向けの観光需要を取り込むため、ビジネスジェットの受け入れ環境を強化し、ゴルフツアーや医療観光を促進する計画です。さらに、航空貨物の輸送需要を掘り起こし、物流拠点としての機能強化も目指しています。
4. 環境対策と持続可能な運営
脱炭素化に向けた取り組みとして、空港の建物の省エネ化や太陽光発電の導入が進められています。さらに、空港内の業務用車両を電気自動車(EV)化する計画もあり、環境負荷を低減する方針です。
5. 災害時の対応能力強化
大規模災害時における救援活動の拠点としての機能を強化するため、関係機関との連携を深め、業務継続計画(BCP)の策定や定期的な訓練を実施することが予定されています。
茨城空港の将来ビジョンを実現するための具体的計画
茨城空港が目指す将来ビジョンの実現には、旅客の利便性向上や航空需要の増加に対応するためのインフラ整備が不可欠です。特に、ターミナルビルの拡張、平行滑走路の整備、駐車場の拡充、燃料供給施設や航空貨物取扱機能の強化といった具体的な施策が必要です。
現在のターミナルビルは、2010年の開港当初に年間約81万人の利用を想定して整備されました。しかし、2019年度には既に約78万人が利用し、2023年度も約75万人まで回復しており、当初の想定に近づいています。また、開港当初は国内線・国際線それぞれ1時間に最大1便の受け入れを前提にしていましたが、2023年10月の運用緩和により、現在は2便以上を受け入れるようになりました。その結果、保安検査場の混雑や待合室の不足、チェックインカウンターの処理能力の限界といった課題が浮上しています。こうした状況を踏まえ、ターミナルビルの拡張が計画されており、保安検査場のレーンを増設し待ち時間を短縮するとともに、待合室のスペースを広げて快適性を向上させる方針です。さらに、自動チェックイン機の増設や顔認証ゲートの導入といった「スマートエアポート化」を進めることで、手続きを迅速化し利便性を高めます。加えて、富裕層向けの観光需要を取り込むため、ビジネスジェット専用の待合室や手続きスペースを確保し、スムーズな運用ができる環境を整えます。
空港全体の運用効率を向上させるためには、平行滑走路の整備が不可欠です。現在、茨城空港の滑走路は1本のみで、到着機が滑走路上を移動して駐機場に向かう間、次の着陸機が上空で待機せざるを得ず、1時間あたりの受け入れ便数が制限されています。さらに、出発機と到着機が同じ誘導路を使用することで駐機場での待機時間が発生し、定刻運航にも影響を及ぼしています。こうした課題を解決するため、現在の滑走路の東側に平行滑走路を新設し、1時間あたりの処理能力を2便から8便へと拡大することを目指します。また、誘導路を複線化し、到着機と出発機の動線を分離することで、スムーズな運航を実現します。さらに、航空会社の運航スケジュールに柔軟に対応できるよう、空港の運用時間を最適化し、利便性を向上させる方針です。
一方で、駐車場の混雑も大きな課題となっています。現在、茨城空港には約3,600台分の無料駐車場が整備されていますが、特にターミナルビルに近い第1・第2・第3駐車場への駐車希望が多く、混雑が発生しています。この問題を解消するため、ターミナルビルに隣接する駐車場を立体化し、収容台数を増加させる計画が進められています。さらに、駐車場の事前予約制を導入することで、混雑を緩和し、利便性を向上させる方針です。また、空港バスの増便や路線の拡充、外国人観光客向けの多言語対応案内の強化も検討されています。
燃料供給施設の強化も重要な課題です。現在、茨城空港の燃料供給施設は限られており、増便に対応するには供給能力の拡充が求められています。そのため、燃料貯蔵タンクの増設や給油車両の増強を進め、迅速な燃料供給が可能な体制を整えます。また、航空貨物の輸送需要の増加に対応するため、物流拠点の整備も進める方針です。現在、茨城空港では中国・上海への路線を活用し、衣類や雑貨などの国際貨物を取り扱っていますが、県内企業の物流が羽田や成田に依存している現状を踏まえ、茨城空港を活用した輸送の優位性をアピールし、さらなる需要の開拓を目指します。そのために、新たな倉庫や物流拠点を整備し、フォワーダーや航空会社と連携した輸送体制を構築する計画です。
茨城空港は、こうしたインフラの整備を進めることで、関東圏の第三の空港としての地位を確立し、地域経済の発展や観光振興に貢献することを目指しています。ターミナルビルの拡張、平行滑走路の新設、駐車場の拡充、燃料供給施設や航空貨物機能の強化といった取り組みが着実に進めば、より利便性の高い空港へと成長し、国内外の旅客や航空会社にとって魅力的な拠点となることが期待されます。今後、これらの計画を着実に実行し、茨城空港がより多くの人々に利用される空港へと進化することが求められています。