八島功男 山本美和 村本修司 防災・減災 高崎進

能登半島地震・水害の教訓/災害救助法に福祉の視点を、トイレカーの配備、防災無線の戸別配備

1月26日、石川県で開催された復興創生大会で、能登半島地震から1年を経て青木賢人金沢大学准教授が講演を行いました。その講演から、参考になる箇所を掲載します。
今回の震災では、トイレカーが非常に大きく役に立った。自治体に1台2台あってもたかが知れているが、いざ災害となったら全国のトイレカーが集まるような仕組みがあれば、もっとスムーズに、被災者の皆さんへの支援ができる。現政権では、その調整機関となる防災庁の設置も検討されている。全国の自治体の力を活用し運用可能なプラットフォームづくりも考えてほしい。
今回の地震では広域避難、二次避難で多くの方々が避難した。避難者の多くは高齢者や若干のハンディを抱えた方だ。その意味では、被災者支援と福祉支援が非常にシームレス(切れ目のない状態)になっている。災害対策基本法は1961年につくられた。住むところと食べるものさえあれば、皆さんが自力で立ち上がっていける時代の考えに基づいた法律だ。この法律の立て付けに福祉の視点を取り入れるべきだ。
能登半島地震では、ハザードマップで浸水が想定されているところに仮設住宅が整備された地域がある。能登は建設に適した平地が少なく、こうした場所に建てざるを得なかった。全国の半島でも同じ課題があるかもしれない。浸水想定地域に整備するならば、そのための対策を講じるべきだ。例えば、基礎を高くするような基準で建てる。50センチでも基礎を高くすれば、昨年9月の豪雨時は床下浸水で済んだかもしれない。
各戸には防災無線の戸別受信機も付けるべきだ。輪島市では、水があふれる2時間前に避難指示が出ていたが、戸別受信機がなかったために、大雨の音でかき消され避難指示が伝わらなかった。今後の教訓として考えてほしい。
あおき・たつと 1969年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。博士(理学)。専門は自然地理学、地域防災。石川県防災会議震災対策部会委員、県教育委員会学校防災アドバイザーなどを務める。